小学校の先生が考える家庭学習の役割と学習方法とは

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ワタセショー
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消しゴムはんこをひたすら彫り進める小学校教師(11年目)です( ̄∀ ̄)これまで56446256556年を担任。子育ての際に「どうしたらいいんだろう?」というよく教育現場で耳にする疑問を中心にお答えします。

「自分の子供はしっかり勉強ついていけてるかな...」
「家で勉強しているところ見るけど、あまりきちんとできていない気がする...」

子供がきちんと学校の授業についていけているか不安に思うママパパも多いと思います。

そこでこのページでは、家庭学習の役割と家庭でできる学習方法についてまとめてみました。

受験させたいわけではないけれども、「普段の授業にはきちっとついていけるようになってほしい」というママパパの方は是非ご覧ください。

小学生時代の勉強の重要性

まずそもそもですが、小学校時代の勉強ってどれくらい重要なのか?という点からご説明します。

小学校の勉強は中学校からはじまる本格的な勉強の基礎作り

一番わかりやすい例をあげると、小学校「算数科」と中学以降の「数学科」の違いです。

「算数」が「数学」になるのは、単純な名称の変更だけではありません。

「数学」とは、数について探求する学問です。

地球について探求する「地学」、歴史について探求する「歴史学」、言葉について探求する「言語学」にならぶ、学問の一つです。ですから、数学では「正解を導き出すための過程、プロセス」が重視されます。

中学校で「数学」を始めるにあたり、探求のために必要な基礎基本を身につけておく必要があるのですが、その基礎基本を身につけるのが小学校「算数」になります。

ですので、小学校における学習は、いわば「基盤づくり」ということなのです。

私は高学年を担任することが多いのですが、いつも心がけているのは「中学校ではこういうことを習うよ。」と伝え、授業の内容の発展先がどういうものなのか見通しを持てるようにします。

いわゆる「中1ギャップ」を少しでも軽減するには、基礎基本を身につけること以上に、見通しを持たせることが重要だと考えるからです。

中学校からは点数で差が出る。その為に基礎が大事。

もう一つ頭に置いておきたいのが、中学校からは“成績ではっきりと比べられる”ということです。

私たちの時代であれば「中3の一年間だけ頑張ったら何とかなる」という考え方の子どもが多かったように思いますが、実は今は「中1からの成績が受験に響く」時代です。

一年生の頃からの蓄積された結果で高校を選択する時代なのです。

つまり小学校6年間での学習は、高校受験と直結すると言っても過言ではなく、とくに小学校高学年の内容は「学問に入るための準備」として最重要だといえるのです。

小学校6年間で、最低限の基礎基本をしっかり身につけておくことの大切さをおわかりいただけたでしょうか。

小学校での学習と家庭での学習の役割の違い

プロの教師としては「家庭学習なんていりません。我々が基礎基本を身につけさせてみせます。」と言い切りたいところではありますが、小学校では30人以上の児童を担当します。

そして、どうしても授業内容の習熟度には個人差があり、一部児童に手がかかってしまいがちになるのが現状です。

全員に個別指導レベルの徹底的な指導をすることが不可能である以上、家庭での学習の必要性は出てくると思います。 

先生が宿題を出す意図

これは私の主観によるところが強いということを先に言っておきます。

私にとって子ども達に出す宿題は、家で学習する習慣をつけるということに目的を置いています。

漢字を丁寧に書こうが、算数で全問正解であろうが、それはこちらの習熟度の確認手段の一つでしかなく、宿題の正否を成績にそのまま反映するようなことはしません。

宿題は「毎日きちんと提出する」ということこそが重要だと私は考えます。 たまに宿題を全問正解させることにこだわりを持たれる親御さんもいらっしゃいます。

計算ドリルに毎日目を通し、先に丸つけをされる方もときどきいらっしゃいます。

担任としては、丸つけの負担が少し減るので有難い面もありますが、子ども達がどんな習熟傾向にあるかを調べるという副次的な目的もあるので、わからないところはわからないまま提出だけはさせるという形をとっていただきたいところです。

学習における先生の役割とママパパの役割を分けるならば

先生の役割

学校では教科書に記載されている内容の習熟を目指し、基礎基本の定着を図り教育を進めています。

しかし、先程も記載しましたが、学校の先生の手が回らない時がやはりあります。

もちろん宿題のやり直しや居残り学習等で補充しますが、それでもわからないままうまくやり過ごす子もいます笑

そういう時にママパパが子供とコミュニケーションを取りながら家庭でフォローしていただければと思います。

ママパパの役割

家庭での学習には2種類あります。それは「復習型学習」と「先行型学習」です。

学習塾も同じように分けられますが、小学校期は「復習型学習」に力を置いた方が良いと思います。

小学校の授業でついていけなかった内容を、家庭でフォローアップする形が理想的だと言えます。

その方が子ども達にとっては大きく負担が軽減されるからです。

学習塾のようにプロが独自のカリキュラムで教えるのであれば先行型学習でも効果は得られると思いますが、家庭学習においてはリスクの方が多いと感じています。 家庭学習役割をあえて挙げるなら、やはり「フォローアップ」に尽きます。

勉強についていけているかどうかを見つけるポイント

では、家庭でフォローをするべきかしないべきかどのようにあ判断すれば良いのか?

あくまでも私の主観によるものですが、下記設問でチェック数が多ければ多いほど、ママパパには家庭で復習型の学習をやっていただければと思います。

  • テストを持って帰ってこない。親に見せなくなった。
  • 返ってきたテストのやり直しができていない。わかっていない。
  • 学校であったことを親にあまり言わなくなった。
  • 連絡帳の字が雑。漢字で書けるのにひらがなで書いている。
  • 部屋が散らかっている。
  • スマホやゲームに関する時間や家でのルールをきちんと守れなくなってきた。
  • 学習ノートが整理されていない。ノートに貼っておくべきプリント等がはさまっている。
  • 本を読む習慣がない。なくなった。
  • 宿題に1時間以上かかる。または宿題がわからない。
  • 忘れ物が多い。

勉強ができていないと感じた場合の家庭での対策方法

上記の章のチェックシートにてチェックの数が多いと感じたママパパは、家庭で対策を始めてみてください。

でも、対策と言っても何をすればいいか難しいですよね。

そこで、家庭で見てもらいたいことを観点別に3つまとめてみました。

  1. どこがわかっていてどこがわかっていないか(習熟度の把握)
  2. 現在置かれている状況が負担になっていないか(塾、習い事、学習商材等の時間や量)
  3. 学習の大切さがわかっているかどうか(将来への見通し、中学3年間の大切さ 等) です。

この中でも特に、すぐにでも整理していただきたいのは②の項目です。

知らず知らずの間に子どもにとって最も大切な「遊ぶ」時間を奪いすぎていませんか?多少の負担は当然必要ですが、少しお子さんと相談する時間をとってみてはいかがでしょうか?

子供と相談した上で、ママパパも家庭でできる具体的な対策方法についても紹介するのでできることから取り組んでみてください。

家庭で宿題をきちんとしているか、またテストのやり直しができているか確認する。

まずはお子さんの家庭での学習の様子をチェックしましょう。

「今日の宿題は〜?」や「テスト見せてみ〜」など声がけをして、現状の状況を確認しましょう。

見るべきポイントは

  • きちんと宿題をやっているか?
  • お子さんが何ができていて何が苦手かの確認

この2点です。

2週間ほど確認して判断するようにしましょう。

 学校での学習面の課題を担任に明確にしてもらう。

自分で判断できないと思えば、先生に聞きましょう。

個人懇談の際「うちの子、勉強ついていけてますか?」とざっくり聞くより、「学習面ではどんなことが課題でしょうか?」と具体的に聞いてもいいと思います。

毎日子供と接している先生だからこそ、きちんと返答してくれると思います!

きちん答えられないようであれば、担任に課題がある気がしますが...笑

すこし足りないかもと感じたら家庭教育商材も検討してみる

宿題はきちんとやっているのにテストの点が悪い。そういう状況の場合は家庭教育商材を検討してみても良いでしょう。

「どこが足りないのか」が明確なのであれば本屋さんに行けば「読解力」「文章問題」等ピンポイントで課題構成されたドリルもあります。

明確でなければ、チャレンジなどの通信教育商材を利用してみるのも一つの方法です!

ただし、一番懸念されるのは子どもの負担が増えすぎないようにするということです。

ドリルを買うのであれば出来るだけ薄いものか、最初からページをちぎってしまう等で、子どもが「きちんと一冊やり切れる」という状況を用意してください。

途中までやってほったらかしのドリルほど無駄なものはありません。

1学年以上前の教材に取り組ませる

理科や社会では単元ごとに内容が全く違うので効果はありませんが、算数や国語のように積み重ね型の教科の場合、とても効果的です。

これだけは学校でも余裕がなくできませんので、家庭学習にもってこいの方法かと思われます。

過去の内容だと子ども達にとって「簡単」「どんどん進める」という感覚になりやすいです。

改めてつまづいたところも振り返れますし、学習を「木」に例えると、「幹の強化」を知らず知らずにできるというメリットもあります。ただ、やはりこれも子どもの負担にならないようページ数やペース面で工夫が必要です。

塾に入れるという選択肢は?

中学受験をお考えでしたら学習塾はマストです。小学校の教科書は受験に対応していません。早くて小四くらいから入塾される方も多いようです。

ただし、私の個人的な意見としては、小学校期は塾は必要ないと考えています。

フォローアップのための「復習型」「個別指導」の塾なら有効かもしれませんが、「先行型学習」の塾は必要ないと考えています。

私がよく保護者の方や友達にいうのが、「低学年期に学習系の習い事に使うお金があるのなら、一冊でも多くの本を読めるようになった方がいい。」ということです。

ここにこっそり書き置きますが「勉強が出来る子≒読書が出来る子」です。

私の学級では「読書5000ページへの旅」という読書活動に取り組んでいます。漫画や図鑑等は禁止、物語文を読んだ量をシートに蓄積していき、5000ページの読書量を目指すという取り組みです。

この取り組みを始めてから、すぐに算数の成績、国語の成績が平均点で7ポイント程上がりました。驚く結果でした。

まずは本屋さんへ、お子さんが「読みたくなる本」を見つけに宝探しに行きましょう。

もし運命の一冊に出会えれば後々の読書活動は保障されますね。あの手この手で読書の世界へ誘ってください。笑

家庭学習で親子のコミュニケーションを!

子ども達にとって、勉強は「高さのわからない山」を登るようなものです。その為たくさんの負担をかけると、本能的に回避します。

ですので、私たち大人の役割は、見通しを持たせて負担を減らすということです。

それはなにかというと「山の高さ」を明確に示すということ。

どこが苦手か、その場合はどうすれば良いか、大人が示し、提案します。そして子どもが決定する。

決して無理強いではなく、子どもが自分で判断できるようにします。

そのために中学3年間の学習の大切さは伝える必要があります。

そして、もう一つママパパは「家庭学習を親子のコミュニケーションツール」として活用すると捉えましょう。

低学年期の子どもは親から教えてもらえるのは嬉しいです。高学年期の子どもは親より知ってることが上回れば快感です。

親子で「一緒に」課題に取り組むことで、「一緒に」成長することがてきるのです。

学習、めんどうですよね。みんな同じです。だからこそ親子で、また教師も巻き込んで「チームプレー」「団体戦」で子ども達と共に成長していくことが理想的だと私は考えます。

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